ゲーム理論は、互いに影響しあう意思決定者（プレーヤー）の振る舞いを分析する数学的なモデルです。競争や協力など、多くの実社会の状況に応用できるこの学問は、嘘や詐欺といった非誠実行為が集団に与える影響についても示唆に富む結論を導きます。
一見個人的利益につながる嘘や詐欺ですが、これらが普及した場合、集団としての長期的な福祉は破綻することがゲーム理論から証明されます。例えば、「監獄のジレンマ」という有名なゲームでは、個々のプレーヤーは自らの利益を最大化するために裏切りが最善と考えがちですが、もし全員が裏切りを選択すると、結果的に全員の利得は減少します。
さらに、詐欺師が増えるということは、相手に対する信頼が低下することを意味します。信頼関係が脆弱化すると、市場では透明性が失われ、情報の非対称性が増すため、良質な商品やサービスの提供者が市場から退去する「逆選択」が発生しやすくなります。これは、市場が荒廃する直接的な原因となります。
加えて、嘘や詐欺行為の頻発は、取引コストの増大を招くことになります。信頼性を担保するための追加的な措置が必要になるからです。その結果、全体の効率性が損なわれ、経済的な損失を招くのです。
最後に、ゲーム理論は反復ゲームの研究を通じて、長期的な関係においては協力的な行動がより望まれる結果をもたらすことを示唆しています。反復される相互作用において嘘や詐欺を用いる者は、結局は他のメンバーからの信用を失い、将来的に利益を得る機会を自ら減少させることになるのです。
以上のように、ゲーム理論から導き出される結論は明白です。嘘や詐欺を多用する行動は、短期的には一部の個人に利益をもたらすかもしれませんが、長期的・集団的には全体の荒廃を招き、損失を増大させる結果となります。真実と信頼が社会を豊かにする礎であることを、ゲーム理論は数学的に証明しているのです。